学生最後の遠征でどこに行くのか。
やままゆに魅せられ追いかけた学生時代の締めとするならば、やはりあの場所には行かねばならぬ。

蛾神 アヤミハビルの棲む島へ......。



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というわけで、3/5~9にかけて与那国島へ行って参りました。
狙いはもちろん、日本が誇る特別天然記念物、世界最大級の蛾神 ヨナグニサンの観察です。

本当はもう少し後がヨナグニサン的ベストシーズンだったと思うのですが、諸々の都合でこのタイミングになったのでした。
しかし与那国島といえば、日本最西端の孤島なだけに、ここでしか見られない昆虫も数多く生息しています。
島内には良質な湿地もあり、水生昆虫は独特なものも多く知られています。
また、台湾が近いことから迷蝶がよく飛来することでも有名です。

ヨナグニサンは夜に灯火で狙い、昼間は迷蝶を含む与那国の蝶と水生昆虫をターゲットとしました。
限られた時間を目一杯楽しむとしましょう......。

関東から与那国島へは最短で1日かかる大移動。行くなら自由気ままなモラトリアム期間のうちに。



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~3/5~

朝5時くらいに家を出て成田空港へ。
与那国島への飛行機でのアクセスは石垣島経由がメインとなります。
2019年から成田-石垣間を結ぶLCC路線ができたうえ、ちょうどセール価格で取れたため破格の値段で行くことが出来ました。やったね。

ただし、石垣-与那国間を結ぶ飛行機が少ないので乗り換えはスムーズではありません。石垣空港で漠然と4時間過ごしました。
まぁ実際過ごしてみると、昼食をとったり、おやつを食べたり、アニメを見たりしたら意外と早く感じました。

そういえば、今回は成田でも石垣でもバズーカのバッテリーは手荷物検査をすんなり通してもらえました。
口頭での容量確認すらされなかったのですが、そんなに知名度上がったんですかね?

そして待望の与那国行きの飛行機...この日は天気が悪く、与那国空港上空の状況によっては引き返すかもとのアナウンスにビクビクしながら離陸。

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日本最後の夕陽に照らされた雲海はとても美しく、それだけで与那国島に来た甲斐があるというものです。

まぁ......



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その美しき雲海の下は悲しすぎるくらいの悪天候なんですが......

曇っているだけならまだしも、低温・強風という最悪なコンディションです。
今日からバリバリ灯火採集するつもりだったのに......。

幸い、アナウンスされていたUターンはなく、無事に与那国空港へ着陸できました。
到着は18時過ぎ。
5時前に家を出て18時に到着する。これが私にできる最善の一手でした。やっぱり遠い......。
(石垣までJALやANAを使えば出発時刻は遅らせられますが、到着時刻は変わらないのです)

レンタカーを借り、宿にチェックインし、荷物を置いてとりあえずライトトラップへ。

初日は航空写真とストリートビューで適当に見当をつけたところで点灯しましたが、周りの環境云々の前に風が強くてライトトラップどころではありません。

30分くらいで諦め、居酒屋でオリオンビールと与那国名物のカジキを頂きました。
宿をとるとこういうことが出来るから良いですね。

明日以降に期待しておやすみなさい。
ちなみに、明日以降も曇り強風の予報です。
初日からこんなにもモチベーションが上がらない遠征もなかなかありません。
Zzz...



~3/6~

朝6時くらいに一旦目が醒めました。
お外はまだ真っ暗でした。

埼玉と与那国島は経度にして15°ほど離れているので、約1時間の "時差" があるのです。
安心して二度寝を堪能しました。

朝食のパンを食べ、優雅に紅茶を啜り(お宿のサービス!)、そろそろ動き出そうかと9時前ごろに出発しました。

レンタカー屋のおじさんに教えてもらったポイントのひとつを走っていると、林道脇を黒いアゲハがふわふわ待っているのを確認。

明らかに我が愛しのちょうちょなので少し車を止めて観察。

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ジャコウアゲハ♂

与那国島のジャコウアゲハは石垣島などと同じ八重山亜種。
赤紋がよく発達し、非常に毒々しくなります。

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ジャコウアゲハ♀

埼玉県民に最も身近なジャコウアゲハ本州亜種は、♀は黒く縁どられたベージュっぽい色合いで、オスとの顕著な性的二型を示しますが、南西諸島の亜種では♀も黒くなる傾向があります。

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この日に限らず、今回の遠征では産地~市街地まで、非常に多くのジャコウアゲハが観察できました。
数年前に訪れた石垣島もそうでしたが、八重山のジャコウアゲハは苦労せずに多数観察できるので最高です。

この場所でジャコウアゲハに見蕩れた後、蝶屋さんに有名なポイントへ。

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山の上で吹き上げられてくる蝶を採集する作戦です。

しかし、まだ時間が早いのか蝶の姿が見えないのでしばらく下の林道を歩いて蝶を探します。

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天気予報では滞在期間中ほとんど曇りで落胆していたのですが、思いのほか雲は薄く、ときたま差し込む日の光が気持ちの良い採集を演出してくれました。

林道を歩いていると、まず目につくのはゆったりふわふわ飛ぶマダラチョウの類です。

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リュウキュウアサギマダラ

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オオゴマダラ

この辺りを見ると南国来た感がしてきますね^^

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ヒメアサギマダラ


ヒメアサギマダラは初見。
もともとは台湾由来の迷蝶だったそうですが、近年は八重山諸島で安定して見られるようです。
脇腹の黄色がチャーミング。サイズも程よい。

これらに加えてアサギマダラが無数に林道を舞っていて素敵な風景を作り出していました。
普段なら、アサギマダラはある程度採集したらぼんやり眺める程度ですが、ここ与那国は迷蝶の島。


もしかしたらよく似たマダラが来ているかも......。


などと実に浅墓な邪心をもって飛んでいるアサギマダラを都度じっくり観察していると、ちょっと雰囲気の違うアサギマダラを発見。

そして、チラリと見えた明らかな違いに確信をもって振りぬきました。

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タイワンアサギマダラ

アサギマダラによく似た迷蝶です!
もしかしたら、とは思っていましたが本当にいるとは......。
アサギマダラとの最大の違いは、腹がオレンジ色であること。
あとは後翅が黒く小柄でしょうか。
数年前にマレーシアで採集した以来の再会です。

その後も通りすがりのアサギマダラチェックを続け、追加を得ることができました。

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タイワンアサギマダラ

こちらは完品。アサギマダラとの違いが際立ちますね!

マダラの他には、僕はやはり、ついついアゲハに目を奪われてしまいます。
林道には無数のジャコウアゲハが舞っていて既に幸せいっぱい。
ジャコウアゲハの次に多かったのはクロアゲハ。

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クロアゲハ♀

沖縄県のものは沖縄亜種として本土とは異なる亜種に分類され、本土亜種よりも赤紋が発達します。
特にメスの後翅裏は非常に美しい!
ちなみに、おとなり台湾には尾状突起のない無尾型がいて、与那国島でもたまに見られるようですが、今回は見られませんでした。

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ヤエヤマカラスアゲハ♂

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ヤエヤマカラスアゲハ♀

クロアゲハに混じって林道を素早く横切るのはヤエヤマカラスアゲハ。
カラスアゲハ系はやっぱりテンション上がります!キラキラ☆
本当は前翅に隠れている部分の後翅の碧さが最高なんです。
止まっているとなかなか見えないのが残念......。
時期的なものなのか、あまり多くは見られませんでした。

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アオスジアゲハ

あとはお馴染みアオスジアゲハ。
お馴染みというと、沖縄ではシロオビ、ベニモンが多いイメージですが、今回は全然見ませんでした。


アゲハやマダラといった蝶を採集・観察して林道を行ったり来たりすること1時間半ほど。
日も差してきて蝶がふわふわ舞う林道をぼんやり幸せ気分で歩いていると、突然、道端の花に翠の妖精が舞い降りました。
あまりに唐突に現れたのであたふたしつつも、いつになく素早い動きで網を一閃。

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コモンタイマイ

はあぁぁぁぁあぁぁぁぁっぁぁぁあぁぁぁぁっぁぁぁぁっぁ!!!(発狂)
コココ、コモンタイマイですよっ!?
アゲハ好きとして与那国島で一番採りたかった迷蝶です。
しかもほとんど擦れのないかなり綺麗な個体。
コモンタイマイは、近年、与那国島で毎年のように採集されているようです。
幼虫も確認されているらしいので、この個体も与那国で生まれ育ったのかもしれません。

黒地に散りばめられた蛍光緑の斑紋は日本のチョウにはないカラーリングです。
翅の表面も非常に鮮やかで美しいですが、個人的に胸打たれたのは翅の裏面。

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向こう側に異次元空間がうねっているかのような不思議な色合いです。
そしてやはり、そこに浮かぶ緑の斑紋が実にエレガント。
尾状突起が付いているのも個人的に評価高いです。

コモンタイマイを採集して非常に満足感を得たGasyunは、林道歩きを一旦やめて山頂の吹上採集に移行しました。
レンタカー屋のおじさんが12時くらいからが良いと言っていたので時間的にもちょうど良いはず。

山頂に行ってみると、さっそくイイ虫発見。

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シロミスジ

国内では与那国島でのみ定着しているミスジチョウです。
特徴的なのはその裏面。

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他のミスジチョウにはない非常に鮮やかな橙色です。
これもこの島で採りたかった蝶のひとつ。

さらに山頂で飛んでいたシジミをキャッチ。

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ホリシャルリシジミ♂

台湾からの迷蝶といわれているルリシジミです。
翅の表一面に広がる瑠璃色がとっても贅沢。
春の与那国島に多く飛来する名物で、ここの山頂が有名ポイントとなっているそう。
展翅スキルが低いのでシジミチョウは普段あまり採集しないのですが、今回は完全にミーハー採集しました笑

採集したかった蝶は一通り採れたので、お昼に与那国名物でも食べに行こうかとも思ったのですが、翌日以降の天気予報は曇りか雨。
この晴れ間を逃したら蝶採集は最後かも...と思うと惜しくなり、もうしばらく採集を続行。


林道で道往く蝶を観察したり...

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ジャコウアゲハ

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クロツバメ

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クロテンシロチョウ

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アオスジアゲハ

山頂でミーハー蝶の追加を狙ったり。

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ウラナミシジミ

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ホリシャルリシジミ

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シロミスジ

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ヤエヤマナガハナアブ

林道と山頂を行ったり来たりして14時半ごろまで採集しました。
林道を舞うアゲハ達に癒されつつ、山頂ではシロミスジ・ホリシャルリシジミは追加が得られて、なかなかの成果。
ヤエヤマナガハナアブはものすごいハチ擬態ですね...山頂をブンブンしてました。
ハナアブなので刺しも噛みもしない安全な子です。

14時半にもなるとさすがに空腹と日焼けがキツくなったので、ここで採集は切り上げ、遅めのお昼を食べに集落まで下りました。
14時で閉まってしまう店が多くて危なかったのですが、ギリギリ比較的遅めまで空いていた八重山そば屋で車エビそばを頂きました。
殻がついたままの車エビがたくさん乗っていて、ボリュームも味も申し分なかったです。ごちそうさまでした。

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昼食後は、水昆採集や今夜のライトトラップの場所を探しつつドライブ。

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とりあえず最西端の碑。

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ヒレを失ったカジキ。

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日本最西端から眺める最西端の島

疲れた来たので、夜の食糧を買い、宿に戻って日が暮れるまで一休み。


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日が暮れてきたので活動再開。
見よう見まねで1つだけつくってみたライトFITを適当な場所に仕掛けてライトラへ。
出発時点では風が弱かったので、昨晩ライトラを試みた場所へ行ってみたものの、点灯後しばらくして風が強くなってきてしまいました。

さすがにここでは風が強くて飛来がお粗末なので、夕方にチェックしたポイントを転々とし、風の影響が小さそうなポイントで細々とライトトラップを行いました。

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チャモンキイロノメイガ

関東にはいない南方系ノメイガ。今夏の屋久島以来の再会。
お尻からフェロモン腺らしきものがでてるのでメスでしょうか。

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シロスジヒトリモドキ

微妙そうなのでポイント移動。

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ムラマツカノコ

見づらい写真で恐縮ですが...台湾経由で分布を拡大してきたといわれるカノコガです。
翅が透けていてハチっぽく、非常にGasyun好みです。

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キオビアシブトクチバ

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イカリモンノメイガ

八重山にはよく似たヤエヤマイカリモンノメイガもいるようですが、今回観察できたものは全て普通のイカリモンノメイガっぽい。


バズーカのバッテリーが切れたタイミングでさらにポイント移動。
この日はここが飛来数は一番多かった気がします。

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コナフキアカシマメイガ(?)

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ヤエヤマサンカククチバ

その名の通り八重山特産。かわいい。

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ウスコカクモンハマキ(?)

外見からチャノコカクモンハマキとの区別はつきませんが、沖縄にチャノコはいません。

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ヘリグロヒメアオシャク

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ヤクシマフトスジエダシャク(?)

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アサヒナオオエダシャク

シャクガは同定苦手です......。

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キマダラヒメミヤマカミキリ

国内では与那国特産のカミキリムシ。
キマダラミヤマカミキリ感はあまりないと思うのですが...笑
今夜の一番の収穫になるでしょうか。

最後のポイントは多少は飛来が良かったものの、大型種が飛来せずイマイチなので、周りの茂みも観察。

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アマミナナフシ

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コバネコロギス

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タイワンクツワムシ

暇すぎて鳴き声を頼りに探しました。

茂み探索にも飽きて車の中で仮眠していたら気づけば日も変わってバズーカも消えていました。
この日はもう諦めて宿での睡眠を選択しました。


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ヤエヤマイシガメ

帰り際に道に飛び出してきて危うく轢くところでした...かわいい~
与那国島には、カメはヤエヤマイシガメしか生息していないそうです。

轢かれないよう道の脇にどかし、宿へ帰還。
冷やしておいたオリオンビールを煽って寝ました。
Zzz...



>>後編へつづく