先週、フチグロトゲエダシャクの発生を確認した土手で、またしても観察してきました。
今日の狙いは、メスや交尾の観察です。

11時頃にポイントに到着。
さっそく頭上をフッチーが飛び去って行きました。
この日は天気予報で5月並みと言われるくらいの気温だからか、かなり高い位置を飛んでいました。

先週は観察できなかったメスを見るため、オスが飛んでいく先をじっくりと見定め......る前に見失うこと数回。

ようやく下草に降り立つところまで見届けることが出来ました。
こっそり近づいて......。

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フチグロトゲエダシャク♂

この個体は、単に休憩のために降り立ったようでした。
しばらくこの個体について行って飛んでいく先を探していたのですが、この個体は交尾相手を探しているわけではないのか、全然メスのところにはたどり着けませんでした。

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この個体にメスを見つけてもらうことは諦め、視界に飛び込んできた別の個体を手掛かりにしていきますが、元気が良すぎて見失います。
しかし個体数は少なくないので、見失っては別の個体を追い、さらにそれを見失って......というのを30分ほど繰り返しました。

あまりにも見失い続けていて、この方法は悪手なのではないかと思い、途中で方針変更。
「オスが飛び出した辺りには交尾を終えたメスがいるのではないか」
と考え、オスを追いかけるのではなく、オスが飛び出した周辺を隈なく目視で探してみることにしました。
仮にそういうわけでなくても、次から次へと視界に入ってくるくらいオスがいるわけですから、同じくらいの頻度でメスが居てもおかしくなくないわけです。

さぁどこからでもかかってこい、という気持ちで歩いていると、オスが飛び立ちました。
飛び出した場所をじっくりと見渡していると、Gasyunの眼は視界の隅に動くものを捉えました。

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フチグロトゲエダシャク♀


本当にいたー!
考え方はあながち間違ってはいなかったようです。

オスとは打って変わって、翅はなく触角は糸状、胴体の毛並は短く、お腹はたっぷりの卵でパンパンに膨らんでいます。
知らなければコロコロした別生物です。

先ほど飛び出したオスと交尾をしていたのかは定かではありませんが、地面をヒョコヒョコ歩いていたために見つけることが出来ました。
アザラシと例えられることの多いフォルムですが、足取りはしっかりしていてなかなかの歩行スピードでした。

このメスをひとしきり観察した後、ふと顔を見上げると視界にオスの姿が入ってきました。
そのオスは狭い範囲をしばらくぐるぐる飛び回った後、ある一点に吸い込まれるように降り立ったように見えました。
あれはどう見てもメスへの定位行動では??

直前まで見ていたメスの観察をやめ、ゆっくりと、オスが吸い込まれた点へ近づいていきます。

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フチグロトゲエダシャク交尾

予想通り、交尾が成立していました!
この日の最大の目標は交尾ペアの観察だったので、目標達成です。

フチグロトゲエダシャクの交尾は結構あっさりしていて、写真を撮っているうちにオスは数分で飛び去て行きました。

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オスが飛び去ったあとのメス

枯れ折れた枯草にぶら下がるようにしてコーリングしていたのでしょうか、この体勢はかなりフェロモン拡散力が高そうです。

この交尾ぺアを観察していたのは12時くらいだったのですが、この辺りの時間帯は特にオスの飛翔数が多くなり、どのオスを追いかけようか迷うほどでした。
12時前後くらいが飛翔やコーリングのピークなのでしょうか。

色めき立ったオスの行く先を眺めていると、またしても定位行動のような動きで一点に収束していくオスを発見。
近づくと、やはりオスが交尾を試みていました。
光の角度が悪かったので、周りの枯草をどけてカメラを向けようとしたらオスは飛び去ってしまいましたが......。
邪魔してごめんなさい......。

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イイところを邪魔して申し訳ないと思いつつ、交尾していないならまたコーリングしてオスを呼び込むだろうと思って、5分おきくらいにこのメスをチェックしていました。

移動することなく同じ場所にじっとしていたのですが、発見から20分くらいたって、ふと違和感に気付きました。

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腹部の先端をつかまっている枯草にくっつけている......。
これには、飼育の経験からピンときました。産卵中では......?
フチグロトゲエダシャクのメスは枯草などの隙間に産卵管を差し込んで卵を産み付けるのです。

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少し角度を変えてみてみると、やはり枯草根元の裂け目に産卵管を伸ばしていました。
(見えるでしょうか......?)

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フチグロトゲエダシャク卵

失礼して枯草の根元をよく見せてもらうと、しっかりと卵が産みつけられていました。
交尾を邪魔してしまったと思いましたが、交尾自体は短い間に成立していたようです。


一方で、最初に交尾を観察したメス。

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こちらも何回か戻って観察していたのですが、同じ場所でじっとしていました。
どう見ても産卵には適さない場所での交尾だったので、産卵場所を探すのかと思っていたのですが、腹部の先端から何か出して不動のままでした。

産卵管というよりはフェロモン腺?のような感じがしないでもない......。
こっちのメスの方が交尾がしっかり行われていたように感じましたが、物足りなかったのでしょうか?
フチグロトゲエダシャクの交尾と産卵行動は不思議です。



目標通り、野外でのメスと交尾ペア、さらには産卵行動まで観察できました。
先週から引き続き、幸先良い春のスタートです!


それではっ!